ビールや日本酒に比べて、アルコール度数が高いことで知られる焼酎。では、焼酎のアルコール度数は一体どれくらいなのでしょうか?
この記事では、一般的な焼酎のアルコール度数や、その度数が多い理由などについて解説しています。ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
焼酎は上限度数が酒税法で決められている
アルコール度数とは、摂氏15度において原容量に含まれているエチルアルコールの容量のこと。例えば、アルコール度数が25度の場合、摂氏15度において100ml中のお酒の中に25mlのアルコール分が含まれていということを意味しています。また、アルコール度数には「度」「°」「%」などの単位が使われることがありますが、すべて同じ意味合いです。
焼酎のアルコール度数の上限は、酒税法によって次のように定められています。
甲類焼酎(連続式蒸溜焼酎)は36度未満
甲類焼酎(連続式蒸留焼酎)とは、連続式蒸留機で連続的に蒸留した焼酎のことをいいます。蒸留を重ねることによって純度の高いアルコールになるため、クセがなく、ほぼ無味無臭のクリアな味わいになります。チューハイ、サワーなどのベースに使われることが多い焼酎で、梅酒などの果実酒づくりに用いられる「ホワイトリカー」も甲類焼酎です。
甲類焼酎のアルコール度数の上限は酒税法で36度未満と定められているため、甲類焼酎の定義は「連続式蒸留機で蒸留した、アルコール分36度未満の焼酎」となります。
乙類焼酎(単式蒸溜焼酎)は45度以下
乙類焼酎(単式蒸溜焼酎)は単式蒸留機で一度だけ蒸留した焼酎のこと。日本では15~16世紀頃から造られていたという、伝統的な焼酎です。一度だけしか蒸留操作をおこなわないため、焼酎に原料となる米や麦、芋などの香りや風味が色濃く残り、原料の違いから生まれる個性がよく現れた焼酎になります。焼酎ブームの立役者でもある「本格焼酎」も、この乙類焼酎です。
乙類焼酎のアルコール度数の上限は酒税法で45度以下と定められているため、乙類焼酎の定義は「単式蒸留機で蒸留した、アルコール分45度以下の焼酎」となります。
焼酎の度数で多いのは20~25度
蒸留したばかりの焼酎、つまり原酒のアルコール度数は、芋焼酎で37~38度、麦や米焼酎で43~44度ほどあると言われます。ただし、原酒の状態ではアルコール度数が高いため、一般的には製造元で原酒に割り水を加えてアルコール度数を25度程度に調整されて出荷されているのです。そのため、市販されている焼酎には、アルコール度数は20~25度のものが多く見られます。また、消費者の多様なニーズにこたえる形で、同じ銘柄でも異なるアルコール度数の焼酎が販売されていることもあります。
20度の焼酎が多い理由
アルコール度数20度の焼酎は、特に宮崎や大分で造られる焼酎に多く見られます。
20度の焼酎が普及したのは、戦後の混乱期のこと。当時の日本にとって、アルコール飲料に課せられる酒税は重要な財源となっていました。酒税の場合、基本的にアルコール度数が高くなるほど課税金額が上がるシステムであるため、戦後しばらくの間、焼酎はアルコール度数25度以上のものしか製造を許可されていなかったのです。しかし、25度以上の焼酎はかなり高額であったため、当時の庶民にとっては、なかなか手が出せないものでした。
そのような状況下で、「密造焼酎」が造られるようになります。密造焼酎とは、国から酒造の許可を受けていない業者などが造る質の悪い焼酎のことで、そのアルコール度数は20度程度のものが多かったようです。
密造焼酎は価格が安いことから広く出回り、正規の酒造会社が造る25度以上の焼酎が売れなくなるという事態に陥ってしまいました。そこで、国は密造焼酎への対抗措置として昭和28年に酒税特別措置法という法律をつくり、正規の酒造会社にも20度の焼酎の販売を許可したのです。その結果、多くの酒造会社ではより酒税法の安い20度の焼酎を造り始め、密造焼酎は売れなくなり、廃れていきました。
20度の焼酎はストレートで飲みやすい、優しい味わいであるといった理由で支持され続け、現在に至るまで製造され続けています。
25度の焼酎が多い理由
アルコール度数25度の焼酎は、特に鹿児島県で造られる焼酎に多くあります。
その理由には諸説ありますが、昭和15年に定められた酒税法の税率の基準となるアルコール度数が25度だったからという説が有力となっています。25度が基準で、26度以上のお酒を販売する場合はアルコール度数1度が上がるごとに、1kℓ当たりに課せられる税率が上がるので、25度に調整した商品が多くなったというわけです。
その後、先述のように戦後の混乱期に密造焼酎対策のために酒税法が改正されて基準が20度に下げられ、20度の焼酎が普及したものの、より伝統的な25度の焼酎が残されたと言われています。
有名銘柄のアルコール度数をご紹介
続いて、有名な焼酎の銘柄のアルコール度数をご紹介します。
魔王(25度)
森伊蔵、村尾と合わせて「3M」と呼ばれ、プレミアム焼酎の一角を担う「魔王」。鹿児島県の白玉醸造が手掛ける芋焼酎で、鹿児島県に多い25度の焼酎に仕上げられています。
(出典元:amazon.com)
村尾(25度)
森伊蔵、魔王と合わせてプレミアム焼酎の「3M」と呼ばれる「村尾」は、鹿児島県の村尾酒造が手掛ける芋焼酎です。先に紹介した「魔王」と同様、鹿児島県に多い25度の焼酎に仕上げられています。
(出典元:amazon.com)
赤兎馬(20度・25度)
『三国志』に登場する一日に千里走るという名馬から名を借りた「赤兎馬」。鹿児島県の濱田酒造が手掛ける芋焼酎で、20度と25度の商品ラインナップがあります。
(出典元:amazon.com)
佐藤 黒(25度)
プレミアム焼酎のひとつとして知られる「佐藤 黒」。鹿児島県の佐藤酒造が手掛ける芋焼酎で、鹿児島県に多い25度の焼酎に仕上げられています。
(出典元:amazon.com)
むぎ焼酎 いいちこ(20度・25度)
『下町のナポレオン』のキャッチフレーズで一世を風靡した『むぎ焼酎 いいちこ』。大分県の三和酒類が手掛ける麦焼酎で、20度と25度のものが販売されています。
(出典元:amazon.com)
黒霧島(20度・25度)
居酒屋でも定番となっている「黒霧島」。宮崎県の霧島酒造が手掛ける芋焼酎で、20度と25度のものが販売されています。
(出典元:amazon.com)
他のお酒のアルコール度数は?
日本でよく飲まれる焼酎以外のお酒のアルコール度数は、一体どれくらいなのでしょうか?
乾杯の定番のビールは、主要なお酒の中ではかなり度数が低い方で、だいたい4〜5度です。ただし、クラフトビールなどでは、10度前後の銘柄も見られます。
日本酒やワインは種類によっても異なりますが、おおむね10~15度程度。焼酎よりも10度ほど低く、基本的に何かで割ったりすることなく、ストレートで飲まれています。
焼酎と同じく蒸留酒に分類されるウィスキーの場合は、およそ40〜43度。シングルモルトやバーボンには、50度を超える銘柄も見られ、焼酎に比べてもかなり高めになっています。そのため、一般的にウィスキーは水やソーダで割って飲まれることが多いです。
また、ジンやラム、ウォッカ、テキーラなどのスピリッツは、種類にもよりますが、おおむね40~50度のものが主流です。これらのスピリッツは、ショットで飲まれることの多いテキーラを除き、カクテルのベースに使われることが多く、カクテルになるとアルコール度数は一気に下がり飲みやすくなります。
アルコールが強すぎると感じたときの対処法
お酒をあまり飲み慣れていない方はもちろん、普段からビールや日本酒を召し上がる方でも、焼酎をストレートで飲むとアルコールが強すぎると感じることがあります。それでもアルコールを抑えつつ焼酎を味わいたいという時は、どうすればよいのでしょうか?
水やお湯で割る
最も手軽な方法は、水割りやお湯割りにすることです。例えば、焼酎と水を等量で作った場合、アルコール度数は約半分になります。水割りやお湯割りの場合、アルコール度数を調節しながらも、焼酎のもつ本来の味わいを変えることなく楽しむことができるのも大きなメリットです。
また、焼酎を飲む前日にあらかじめ水で割っておく「前割り」という方法もあります。
ソーダで割る
無糖の炭酸水で割るソーダ割りも、アルコールを抑えるのに有効です。ソーダ割の場合、アルコール度数を調節できるほか、焼酎に炭酸の爽快な飲み応えが加わります。そのため、暑い夏には特におすすめの方法です。
その他の飲料で割る
焼酎のアルコールを抑えることができるのは、水やお湯、炭酸水だけにとどまりません。例えば、緑茶やウーロン茶などのお茶類、果汁、清涼飲料水などで割ることで、アルコールの強すぎる刺激を抑えることができます。
この方法では焼酎本来の味わいや個性は薄れてしまいますが、かなり飲みやすくなるため、焼酎初心者の方におすすめです。
まとめ
焼酎のアルコール度数について解説しました。20度や25度が多いことの背景を知って、意外に思われた方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
アルコールのとり過ぎには十分注意し、必要があれば水や他の飲料で割るなどして、上手に焼酎と付き合ってくださいね。
興味深い内容!
気になっていた焼酎の度数問題。
「密造焼酎」が関わっているとは、驚きました。
戦後の密造酒といえば、カストリやバクダンがやり玉にあげられたのでしょうか。