焼酎のパッケージやラベルに、「甲類」や「乙類」、「本格焼酎」などと書かれているのを目にしたことはないでしょうか?
なんとなく見過ごしてしまいがちですが、これらの言葉はその焼酎の性質を知るうえで、大いに役に立つのです。
そこで、この記事では、焼酎の「甲類」と「乙類」の違いや「本格焼酎」の定義、それぞれのオススメの銘柄をご紹介していきます。ぜひ焼酎選びの参考にしてください。
この記事の目次
焼酎の甲類と乙類の違いは蒸留法
焼酎の甲類や乙類という区分は、もともとは酒税法上の区分で、その違いは製造工程における「蒸留法」にあります。
そもそも焼酎とは、米や麦、芋などの所定の原料をアルコール発酵させて蒸留したお酒。また、
① 連続式蒸留機で蒸留、アルコール分36度未満
② 単式蒸留機で蒸留、アルコール分45度以下
のいずれかに当てはまり、ウィスキーやウォッカ、ラム、ジンなどに該当しないものと定義されています。
そして、この①に該当する焼酎が「焼酎甲類」、②に該当するものが「焼酎乙類」です。
2006年に酒税法が改正されたことにより、現在では「甲類」は「連続式蒸留焼酎」、「乙類」は「単式蒸留焼酎」という名称で呼ばれていますが、引き続き「甲類」「乙類」という表示をすることも認められています。
なお、両者を混ぜたものは「混和焼酎」と呼ばれています。
甲類(連続式蒸留焼酎)の製法と特徴
甲類の焼酎(連続式蒸留焼酎)を造るときは、連続的に蒸留操作をおこなう「連続式蒸留器」を用います。
「連続式蒸留器」は1820年代にイギリスで開発され、日本には1900年前後から導入されているようです。
連続的に蒸留を重ねることで純度の高いアルコールになるため、クセがなく、ほぼ無味無臭のクリアな味わいの焼酎に仕上がります。そのため、梅酒やチューハイ、サワーなどのベースになることが多いのが特徴です。
乙類(単式蒸留焼酎)の製法と特徴
乙類の焼酎(単式蒸留焼酎)を造るときは、連続式蒸留焼酎とは対照的に、一度だけしか蒸留操作をおこないません。
そのため、米や麦、芋などの原料の香りや風味が色濃く残った焼酎に仕上がります。このような原料の違いから生まれる個性が、単式蒸留焼酎の大きな魅力のひとつと言えるでしょう。
本格焼酎は乙類の選りすぐりの総称
次は、「本格焼酎」について見ていきましょう。
従来の焼酎の「甲類」「乙類」という区分では、乙類(単式蒸留焼酎)が甲類(連続式蒸留焼酎)よりも劣っているというイメージが抱かれるのではないか、という懸念がありました。そこで関係各所から提案されたのが、「本格焼酎」という呼称だったのです。
「本格焼酎」という呼称が正式に認可されたのは1971年のこと。その後、2002年には「本格焼酎」を名乗る基準が厳格化されました。
その基準は、乙類の焼酎(単式蒸留焼酎)であり、なおかつ「指定の原料」と麹を使用し、水以外の添加物を一切加えていないこと。
「指定の原料」とは米、麦などの穀類、芋類、清酒粕、黒糖の4品目を指し、ほかにも「政令で定める物品」に指定される栗や胡麻などの49品目を使用することが可能です。ただし、「政令で定める物品」に指定される49品目を使用する場合、その重量の合計が、併用する穀類や芋類、および麹の重量を超えないことが条件となります。
本格焼酎ブーム
「本格焼酎」を名乗る基準が定められたことが後押しして、日本では2003年頃から「本格焼酎ブーム」が起きました。同年には焼酎類全体の出荷量が日本酒の出荷量を約50年ぶりに上回り、翌年の2004年には焼酎の売上高はピークを迎えています。
また、「本格焼酎ブーム」に伴って、材料や製法にこだわった焼酎が出回るようになり、本格焼酎を専門に扱う焼酎バーも登場するようになりました。
歴史が古いのは乙類の焼酎
焼酎の「甲類」と「乙類」の製法や特徴の違いを見てきましたが、より歴史が古い焼酎はどちらなのでしょうか?
先にも述べたように、甲類の焼酎を造るときに使われる連続式蒸留器が日本で導入されたのは1900年前後のこと。
その一方で、単式蒸留の乙類の焼酎は、15世紀ごろから既に琉球(現在の沖縄県)で造られていたと言われています。これが、現在でいう「泡盛」です。
その後、16世紀には鹿児島県に伝来し、江戸時代に入ると九州各地で単式蒸留焼酎が造られるようになりました。当時の焼酎は酒粕から造られる「粕取焼酎」が主流でしたが、18世紀には鹿児島でサツマイモを原料とした芋焼酎が造られていたようです。
このように、甲類の焼酎に比べると、乙類の焼酎には格段に古い歴史があり、より伝統的な焼酎と言えるのです。
甲類焼酎
甲類焼酎でオススメの銘柄
【サントリー】ホワイトリカー 35度
自宅で梅酒などの果実酒を作りたいときにおすすめの1本が、サントリーの「ホワイトリカー」です。すっきりとした味わいで雑味がないため、果実の香りや味わいをそのまま引き立ててくれます。
果実酒造りのほかにも、果汁やジュース、炭酸水などと割って、好みのチューハイやサワーを作るのもおすすめです。
(画像参照元:amazon.com)
【宝酒造】宝焼酎 25度
チューハイやサワーのベースの焼酎をお探しの方におすすめの1本が、宝酒造の「宝焼酎」です。明治時代に誕生した「宝焼酎」には、100年以上という、甲類焼酎の中ではひときわ長い歴史があります。
当時は珍しかった甲類焼酎の「宝焼酎」は関東地方で爆発的な売れ行きを見せ、時代が移り変わっても人々に愛され続けてきました。現在でも多くの居酒屋でチューハイのベースに使用されています。
(画像参照元:amazon.com)
乙類焼酎
乙類焼酎でオススメの銘柄
【雲海酒造】大河の一滴 25度
雲海酒造は宮崎県宮崎市に本拠を置き、蔵のある土地の自然の恵みを活かし、その土地ならではの味わいを追求している酒造メーカーです。
そんな雲海酒造が手掛ける焼酎の中でも、特におすすめなのが、麦焼酎の「大河の一滴」です。厳選された麦を丁寧に仕込んだこだわりの麦焼酎の原酒を、長期間オーク樽で熟成。
まるでウィスキーのような香りとコクが楽しめる本格的な味わいです。
おすすめの飲み方はオンザロックか水割り。冷やして飲むことで、きりっと風味が引き立ちます。
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【霧島酒造】茜霧島 25度
芋焼酎初心者におすすめの芋焼酎が、霧島酒造の「茜霧島」です。
「キラッとはなやか」というキャッチフレーズの通り、華やかな香りに、フルーティーでまるみのある味わいに仕上がっています。
名前の由来になっているのは、原料に使用されている「タマアカネ」という品種の芋。その香りを際立たせるため、霧島酒造のオリジナルの「芋の花酵母」という酵母が使用されています。
従来の「芋焼酎は男性の飲むお酒」というイメージを覆すかのような新感覚の1本で、女性にもおすすめです。
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【塩田酒造】六代目百合 25度
濃厚な香りと味わいの芋焼酎がお好きな方におすすめの1本が、塩田酒造の「六代目百合」です。塩田酒造は鹿児島の薩摩半島からフェリーで1時間ほどの「甑島」という小さな島にあり、江戸時代か島内産のさつま芋にこだわって焼酎造りをおこなってきた酒蔵です。
そんな塩田酒造の6代目、塩田将史氏が手掛ける「六代目百合」は、鮮烈な香りとふくよかな旨味、筋の通った濃厚な味わいで、まさに「芋焼酎の王道」とも呼べる1本です。
飲み方はストレートかロックがおすすめ。
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【鳥飼酒造場】吟香 鳥飼 25度
米焼酎のおすすめが、数ある米焼酎の中でも抜群の人気を誇る鳥飼酒造場の「吟香 鳥飼」です。
鳥飼酒造場があるのは、熊本県南部の九州山地に囲まれた球磨地方の人吉盆地。「球磨焼酎」と呼ばれる米焼酎の本場です。
「吟行 鳥飼」は完熟したトロピカルフルーツや大吟醸酒を思わせるフルーティーで華やかな香りと、さわやかで心地よい飲み口が特徴的。
飲みやすい味わいのため、焼酎初心者にもおすすめです。
(画像参照元:amazon.com)
混和焼酎
混和焼酎でオススメの銘柄
【アサヒビール】麦焼酎 かのか 25度
「その日一番のやすらぎの時を与えてくれる焼酎」をコンセプトに生まれたアサヒビールの「かのか」。特に香りにこだわっており、「よい香り」という意味の「かのか(佳の香)」が名前の由来となっています。
三種のこだわりの麦焼酎の原酒と甲類の焼酎のブレンドにより、豊かでやさしい香りに、麦本来の味わいときれいな後味を実現。
すっきりとした飲み口のため、ロックや水割りはもちろんのこと、緑茶ハイやウーロンハイなどを作っても楽しめます。
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【サッポロビール】黒麹仕込み いも焼酎 こくいも黒 25度
リーズナブルな価格ながら、芋焼酎の香りとコクが楽しめるのが、サッポロビールの「こくいも黒」です。
甕(かめ)貯蔵酒を一部使用した黒麹仕込本格芋焼酎に、甲類焼酎をブレンド。
芋焼酎ならではの芳醇な香りと、まろやかな味わいが楽しめます。
ロックや水割り、お湯割りなどで飲むのがおすすめです。
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まとめ
焼酎の「甲類」と「乙類」の違いや「本格焼酎」の定義、それぞれのオススメの銘柄をご紹介しました。
焼酎の区分や用語の定義などがわかれば、より自分に合った1本を見つけやすくなり、焼酎を飲む時間も一層楽しくなるはずです。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、ぜひこのような用語にも目を向けつつ、焼酎を楽しんでくださいね。
焼酎の甲と乙の違いは造り方
【甲類】
・連続式蒸留
・アルコール分36度未満
【乙類】
・単式蒸留機で蒸留
・アルコール分45度以下
乙類の方がアルコール度数が、高くても大丈夫なのは、なんだか不思議な感じがしますね。
それでいて、流通しているのが、20〜25度が多いのは、どうしてなんでしょう。