泡盛の原料はタイ米!焼酎との違いやタイ米が使われる理由まで紹介

沖縄県の伝統的な焼酎として知られる泡盛。実は、そのほとんどがタイ米から造られているということをご存知でしょうか?

泡盛は酒税法では米焼酎の一種に分類されてはいるものの、沖縄の独自の文化のもとで育まれてきた泡盛には、米焼酎とは違う独自性がたくさんあります

この記事では、米焼酎と泡盛の違いについて解説しながら、泡盛の原料にタイ米が使われる理由を探っていきたいと思います。また、タイ米を使った泡盛の有名銘柄も3つ紹介しますので、ぜひ泡盛を選ぶときの参考になさってください。

泡盛とは?

泡盛とはおもに沖縄県を原産地とする焼酎の一種です。では、沖縄県でしか泡盛が造られないのかというと、そういうわけではありません。条件さえ満たせば、沖縄県以外の場所でも泡盛を造り、販売することができるのです。泡盛と名乗れる条件としては、

・原料はお米であること

・麹には黒麹菌を使うこと

・麹と酵母と水だけで発酵させること

・単式蒸留器で蒸留すること

・アルコール度数が45度以下であること

などがあります。これらの条件を満たせば、どこで造っても泡盛として認められるのです。

「本場泡盛」と「琉球泡盛」

「泡盛は沖縄県でしか造られない」と考えていた方も多いのではないでしょうか?意外にも、造ろうと思えば、沖縄県以外でも泡盛が造れてしまうのです。

とはいえ、泡盛には琉球(現在の沖縄県)で造られるようになってから500年以上の歴史があります。そして、その間ずっと、沖縄で愛され守られ続けてきた、沖縄県の誇るお酒なのです。

そのような歴史や事実を踏まえ、1983年に沖縄県で造られた泡盛だけに「本場泡盛」の表示が認められるようになりました。その後、2004年には国税庁の地理的表示に関する基準を満たしていたことから、「琉球泡盛」という名称が表示できるようになり、「本場泡盛」から「琉球泡盛」へと名称表示の切り替えが進みました。現在では沖縄県のほとんどの酒造メーカーの泡盛に「琉球泡盛」という表示がなされています。

泡盛の原料はタイ米

泡盛は米を原料に造られるお酒です。その米には、普段私たちが食べている日本米(ジャポニカ米)ではなく、インディカ米に分類されるタイ米が使用されています。

一方、米焼酎に使われる米は日本米です。

泡盛も米焼酎も米を原料に造られる焼酎ではありますが、この米の酒類の違いが、泡盛と米焼酎の大きな違いのひとつに挙げられます。

では、泡盛と米焼酎には、ほかにどんな違いがあるのでしょうか?以下、詳しく見ていきましょう。

泡盛と米焼酎の違い

前提:酒税法では泡盛も焼酎の1種

日本の酒税法では、泡盛も焼酎の一種に分類されています。また、酒税法上の焼酎の分類には、「甲類(連続式蒸留焼酎)」と「乙類(単式蒸留焼酎)」、両者を混合した「混和焼酎」の3種類ありますが、単式蒸留器で蒸留される泡盛も米焼酎も、「乙類(単式蒸留焼酎)」に分類されます。

以下、その違いが具体的にどこにあるのかを見ていきましょう。

違い1:米(タイ米)

一般的に米焼酎には日本米が使われますが、泡盛にはタイ米を使うのが主流となっています。

ただし、必ずしもタイ米を使わなければならないわけではありません。現在でも沖縄県内のほとんどの酒造メーカーが昔ながらの製法で、タイ米を使って泡盛を造っていますが、なかには日本米や島米と呼ばれる沖縄県産米を使った泡盛も造られています。また、高知県でも地場産米を使用した泡盛が製造・販売されているようです。

違い2:麹菌(黒麹菌)

麹菌とは日本酒や発酵食品を造るときには欠かせない有用微生物です。麹菌は、焼酎造りの工程において、原料となる穀類やイモ類のでんぷんを糖に変える働きを担っています。その糖を酵母が分解することで、アルコールが生成されるのです。

焼酎造りに使われる麹菌には白麹、黄麹、黒麹の3種類があります。

米焼酎造りに使われる麹菌は白麹が主流ですが、必ずしも白麹を使わなくてもよく、他の種類の麹菌が使われることもあります。

一方の泡盛の場合、必ず黒麹を使わなくてはなりません。黒麹は大量のクエン酸を分泌させるため、雑菌の繁殖を強力に抑えることができます。そのため、常に温暖で湿潤な沖縄県でも、安全に泡盛造りができるようになるのです。

違い3:仕込み(全麹仕込み)

焼酎と泡盛には、仕込み方にも違いがあります。

米焼酎の場合、米麹を原料として発酵させる一次仕込みをおこない、そこに水と米を加えて再び発酵させる二次仕込みをしてから蒸留します。これが、「二次仕込み」と呼ばれる製法です。

これに対し、泡盛の場合、原料となる米をすべて麹にして、一回の仕込みだけで蒸留します。これが、泡盛特有の「全麹仕込み」と呼ばれる製法です。この「全麹仕込み」は、沖縄の温暖湿潤な気候のもとでも、原料の腐敗を防げることから定着したと言われています。

タイ米の特徴

では、泡盛の原料に使われるタイ米について、詳しく見ていきましょう。

タイ米といえば、「平成の米騒動」ともいわれる、1993年(平成5年)の記録的冷夏による米不足を思い出す人も多いのではないでしょうか?もっとも、若い方のなかにはご存知ないという方もいらっしゃるかもしれませんが…。当時、小売店から軒並み米が姿を消し、代わりに出回ったのがタイ米でした。

タイ米は粘りが少なく、独特の匂いがあるのが特徴で、炊飯器で炊いた白米の状態では、日本米のようにもっちりとした食感が出ず、パサパサした食感になります。その一方で、チャーハンやピラフを作るときには、タイ米が向くと言われています。

では、なぜ泡盛を造るときにタイ米が使われるのでしょうか?その理由を見ていきましょう。

なぜ泡盛はタイ米を使うのか?

泡盛にタイ米を使う理由としては、大きく機能的な理由と歴史的な理由の2つがあります。以下、それぞれの理由を詳しく解説します。

機能的な理由

タイ米は日本米に比べて、粘りが少なく、さらさらとした質感です。そのため、タイ米を使った方が、米に黒麹菌を加えて米麹を作るときに作業がしやすい、水や酵母を加えてアルコール発酵させるときの温度管理がしやすい、といった製造工程におけるメリットがあります。

また、タイ米は日本米に比べて糖質が多く含まれているため、同じ量ならタイ米の方がアルコールの取れ高が多いのも、タイ米が選ばれる理由のひとつとなっています。

歴史的な理由

明治時代に入るまで、現在の沖縄県は琉球王国という独立国家でした。江戸時代に日本が鎖国していたときも、琉球は東南アジアの各国と交易しており、特にシャム国(現在のタイ)との交流は活発におこなわれていたのです。その際に焼酎造りとタイ米が琉球にもたらされた、という説もあります。

また、沖縄県は干ばつも多く、大きな川もない水不足になりやすく、大量に水を必要とする稲作には向かなかったのも、タイ米を使うことの理由になっていると考えられます。

タイ米にまつわる、こんな史実もあります。第二次世界大戦後、日本政府は一貫して米の輸入を禁止してきましたが、沖縄県だけは例外的に米の輸入が行われていました。それが、泡盛を造るためのタイ米だったのです。

タイ米で作られてた泡盛の有名銘柄3選

最後に、タイ米から造られている有名な泡盛の銘柄を3つ紹介します。泡盛入門にもおすすめの銘柄なので、ぜひ泡盛を選ぶときの参考にしてください。

久米島の久米仙

『久米島の久米仙』は豊かな自然に囲まれた久米島で造られている泡盛です。

その昔、久米島では夕暮れ時ともなると絶世の美女が現れ、野良仕事帰りの若者達に神酒をふるまっては、言い知れぬ酔い心地へ誘い、人々がこれを仙人の仕業と噂したという「久米島の仙人」の言い伝えが、その名前の由来となっています。

『久米島の久米仙』には久米島の天然の湧き水が使用されており、爽やかな香りとほのかな甘みが特徴的。久米島の自然の恵みが感じられる泡盛です。

(出典元:amazon.com)

残波

『残波』は比嘉酒造が手掛ける焼酎で、その名前は読谷村の残波岬に由来しています。

比嘉酒造では、太平洋戦争後の物資不足の沖縄で、「沖縄県民に良い泡盛を提供したい」との思いから泡盛造りが始まりました。それから現在に至るまで、比嘉酒造では「安全でより美味しい泡盛を皆様にお届けしたい」という理念を守り続けています。

そんな比嘉酒造の『残波』には、フルーティで透明感のある味わいの『残波ホワイト』と、力強く濃厚な味わいの『残波ブラック』の2種類があります。好みに応じて選べるのが魅力的ですね。

(出典元:amazon.com)

【残波 (ホワイト)】

 

瑞泉(ずいせん)

『瑞泉』を造る瑞泉酒造は明治20年創業、長い歴史のある名門酒造メーカーのひとつです。首里城に隣接した場所に酒蔵があり、その社名は首里城内に湧き出る清らかな泉、「瑞泉」に由来しています。

そんな瑞泉酒造を代表する銘柄のひとつである『瑞泉』には、新酒ながら豊かな香りと濃厚な味わいがあり、水で割ってもその風味を失いません。

また、3年熟成させた『瑞泉古酒』も、芳醇な香りと深いコク、まろやかな味わいで、不動の人気を誇っています。

(出典元:amazon.com)

【瑞泉酒造】新酒 瑞泉-SKY-

まとめ

米焼酎と泡盛の違いについて解説しながら、泡盛の原料にタイ米が使われる理由を解説しました。

泡盛にタイ米が使われる理由には、機能的な側面だけでなく歴史的な側面もあったのです。

普段は何気なく飲んでいる泡盛には、独自の歩んできた歴史と伝統があり、それを学べば、泡盛が一層おもしろく、そしてありがたいものに感じられるでしょう。

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