昨今では若い層にも幅広く浸透し、根強いファンを獲得している芋焼酎。そんな芋焼酎には、「3M(スリーエム)」と呼ばれる、幻の焼酎があるのをご存知でしょうか?この記事では、焼酎愛好家たちの憧れの的となっている「3M」について詳しく紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
芋焼酎の3Mとは?
3Mはプレミアム焼酎の3銘柄の頭文字が「M」から
「3M」とは、プレミアム焼酎の代表格である『森伊蔵(もりいぞう)』『村尾(むらお)』『魔王(まおう)』の3銘柄の総称です。各銘柄をローマ字表記すると、偶然にもすべて「M」から始まることが、「3M」という呼び名の由来となっています。
ちなみに、プレミアム焼酎とは、少量生産で希少価値が高く、入手困難な焼酎のことをいいます。例えば、需要に供給が追い付かず、入手困難なことから、ネットオークションなどで通常価格を大幅に上回る価格で取引される焼酎などのことです。つまり、プレミアム焼酎は、その人気の故に割増の「プレミアム価格がついた焼酎」というわけですね。
焼酎ブームに3Mが誕生した
『森伊蔵』に『村尾』、『魔王』。どの銘柄も、昔から造られていた芋焼酎です。では、一体いつから「3M」と呼ばれるようになったのでしょうか?
その背景にあるのは、2003年の本格焼酎ブーム。本格焼酎とは、伝統的な単式蒸溜で造られる「乙類焼酎」のなかでも、法で定められた原料のみを使用して造られた焼酎のことをいいます。この本格焼酎ブームによって焼酎への注目度が徐々に高まり、「3M」をはじめとするプレミアム焼酎が誕生したのでした。
焼酎ブームって?
2000年代前半に巻き起こった本格焼酎ブーム。それまでは本格焼酎といえば麦焼酎が中心でしたが、そこへ芋焼酎が参入し、爆発的人気となったのです。
それまでは芋焼酎といえば、クセが強く、年配の男性が飲むイメージが定着していましたが、本格焼酎ブームを受けて、若い世代や女性にも芋焼酎のファンが急増しました。
このように本格焼酎や芋焼酎がもてはやされるようになったのには、いくつかの理由があります。
まず1つ目は、「焼酎には糖質やプリン体が含まれないから健康的」という考えが浸透したこと。このことから、焼酎は健康志向や美容意識の高い人々にも受け入れられていきました。
2つ目は、マスコミによる情報発信。TVや雑誌で本格焼酎の魅力が多く特集されたことが、ブームに拍車をかけたのです。
3つ目は、焼酎の製法の進化。この頃になると、伝統的な常圧蒸留だけではなく、低温で蒸留をすることができる減圧蒸留が普及しました。それにより、焼酎をクセの少ない、スッキリとした味わいに仕上げることができるようになったのです。こうして、焼酎を飲みなれない人々にも、より飲みやすい味わいの焼酎造りが可能となりました。
こうした様々な要因から、本格焼酎や芋焼酎の人気が爆発し、需要に対して生産が追い付かないような事態も発生するようになったのです。
3Mの種類
それでは、「3M」の銘柄の特徴をそれぞれ具体的に見ていきましょう。
森伊蔵
『森伊蔵』は鹿児島県垂水市にある森伊蔵酒造が手掛ける芋焼酎です。
鹿児島産の有機栽培のサツマイモを原料とし、明治18年の創業当時から伝わる伝統的な「かめつぼ仕込み」という製法により造られています。地中に埋めたかめ壺で仕込むことによって、温度が一定に保たれ、麹の発酵に良い影響があり、焼酎の味わいがまろやかになるのです。
実際、『森伊蔵』も芋焼酎特有の臭みが無く、まろやかな味わいと旨味が特徴的。
熱狂的なファンの多い『森伊蔵』ですが、かつてのフランス大統領のジャック・シラク氏も森伊蔵の大ファンであったことで知られています。トヨタ自動車社長の張富士夫氏がレジオンドヌール勲章を受けた返礼としてシラク氏に森伊蔵12本を持参したところ、「これ以上うれしいことはない。よくぞこれだけの森伊蔵の本数をそろえていただいた。私のことをアルコール中毒と思わないでくださいね。」と言って、周囲を笑わせたのでした。
森伊蔵酒造とは
森伊蔵酒造は明治18年創業した、鹿児島県垂水市の酒造メーカーです。
創業当時から焼酎造りに「かめつぼ仕込み」という造り方を採用しています。また、一貫して少量ながら高品質の焼酎造りに従事しており、森伊蔵の知名度が上がり需要が高まってからも、生産量を増やすことはしませんでした。つまり、『森伊蔵』が入手困難なのは、生産者の品質への強いこだわりがあるからだったのです。
名前の由来
『森伊蔵』の名前は、森伊蔵酒造の経営が傾いて倒産の危機に陥った際、経営を立て直した五代目当主である森覚志氏が命名しました。彼は、受け継がれた技に敬意を払い、四代目当主であり自身の父親でもある森伊蔵の名を焼酎に付けたのだそうです。
森伊蔵の詳しい解説は以下の記事を参考にしてください!
魔王
『魔王』は鹿児島県錦江町に蔵を構える白玉醸造が手掛ける芋焼酎です。
蒸留する際は蒸留機内の圧力を下げて蒸留する「減圧蒸留」という製法を採用しています。圧力を下げることによって、蒸留する際の沸点が下がり、もろみに含まれる成分のうち、華やかな香りの成分が取り出しやすくなるのです。
このような製法から、『魔王』は蜜柑などの和柑橘を思わせるフルーティーで華やかな香りの感じられる、ソフトな飲み口で穏やかな味わいの焼酎に仕上がっています。
白玉醸造とは
白玉酒造は鹿児島県錦江町で明治37年から焼酎造りをおこなう老舗の酒造メーカーです。『魔王』のほかにも、『白玉の露』や『天誅』『元老院』などの銘柄の焼酎を製造しています。
かつて芋焼酎といえばお湯割りで飲むものというイメージが強く持たれていたところ、冷やして飲んでもおいしい香り豊かな焼酎として『魔王』が開発されました。それにより、都市部などでも新たな層に芋焼酎が受け入れられるようになりました。
名前の由来
『魔王』という名前は一度聞いたら忘れられないほどインパクト抜群ですが、その名前の由来は西洋の「天使の分け前」にあるそうです。ウィスキーやブランデーといったお酒は、長期にわたって樽の中で熟成される間に、少しずつ蒸発して目減りしていきます。この減った分のことを、昔から西洋では「天使の分け前」と呼んでいました。その天使を誘惑し、魔界へ酒をもたらす悪魔にちなんで命名されたのが『魔王』だったのです。悪魔のなかでもトップに君臨する魔王が飲む特別なお酒、という意味が込められています。
魔王の詳しい解説は以下の記事を参考にしてください!
村尾
『村尾』は鹿児島県薩摩川内市に蔵を構える「村尾酒造」が手掛ける芋焼酎です。
『森伊蔵』と同じく「かめ壺仕込み」が採用されており、すべての工程が手造りで手間暇かけて造られています。
芋ならではの香ばしい香りに、さわやかな口当たり、ほのかな甘味とまろやかさのなかにもキレのよさを感じる深みのある味わいが特徴です。香りにも味わいにもしっかりと芋の風味が生きた、芋焼酎通をも唸らせる1本と言えるでしょう。
村尾酒造とは
村尾酒造は明治35年に鹿児島県薩摩川内市に創業した酒造メーカーです。『村尾』のほかにも『薩摩茶屋』という代表銘柄があります。これは、かつて蔵の近くに薩摩藩公の御茶屋敷があり、西郷隆盛がこの屋敷を訪れた際に、蔵にもお茶を飲みに寄っていたことから命名されたのだそうです。
村尾の詳しい解説は以下の記事を参考にしてください!
通販で3Mのセットが買える
それでは、非常に入手困難な「3M」の焼酎は、一体どのようにして入手することができるのでしょうか?最も手軽な方法は、大手ショッピングサイトなどの通販を利用することです。通販では時折、「3M」のすべての銘柄が揃ったセット商品なども存在します。しかし、通販を利用する際には、次の2点のことを理解しておく必要があるでしょう。
注意1:プレミア価格がついている
「3M」の焼酎はすべて供給よりも需要の方が高くなっています。そのため、これらの焼酎は基本的に通販では定価よりも高い金額で取引されています。定価の3倍、4倍といった価格がついているようなことも珍しくありません。
注意2:プレミア価格分は、蔵元にお金が入るわけじゃない。
定価よりも高い金額で焼酎を買ったとしても、その定価を上回るプレミア価格分は販売業者の懐に入ることになります。もちろん当初は業者が蔵元から購入しているので、蔵元に入るお金もゼロではありませんが、高額なお金を支払う前にこのことは十分に理解しておく必要があるでしょう。
困難だけど、蔵元さんや酒販店から直接買おう
では、定価で「3M」の焼酎を手に入れるにはどうしたらよいのでしょうか?
最善の方法は、蔵元さんから直接購入したり、蔵元さんの代理店となっている酒販店や百貨店などから購入することです。いずれにしても、電話予約が必要であったり、抽選になることも多々ありますが、プレミア価格を支払うことなく定価で購入することができます。
ネット通販で購入するよりは、やや手間ではありますが、挑戦する価値はあると言えるでしょう。
まとめ
焼酎の「3M」についてご紹介しました。どれも人気なだけに入手困難ではありますが、芋焼酎がお好きな方なら、一度は飲んでみたいですよね。ここでご紹介したように、どの焼酎にもそれぞれの特徴があるように、どの酒造メーカーにもそれぞれの歴史や焼酎造りへのこだわりなどがあります。そのような点にも目を向けながら焼酎を味わってみると、より一層美味しく感じられるようになるでしょう。